ボルゲーゼ美術館のコレクションを訪れる前に知っておきたいギリシャ・ローマの神話

ボルゲーゼ美術館のコレクションを訪れると、貴重な美術品に囲まれます。いたるところに、古今東西の絵画や彫刻、天井のフレスコ画、床のモザイク画が飾られている。調度品のひとつひとつが、別の時代からの貴重な芸術品であり、邸宅そのものも目を見張る美しさだ。

特に、ボルゲーゼ美術館のコレクションは2時間という限られた時間しか見学できないことを考えると、1回の見学ですべてを見るのは難しいかもしれません。そのため、ちょっとした準備が大きな助けになります。ルートを計画し、どの作品に最も興味があるかを考えるだけでなく、これらの傑作にインスピレーションを与えたものについて事前に少し読んでおくとよいでしょう。

作品が古代ローマ時代のものであれ、ルネサンス期の比較的近代的なものであれ、ギリシャ神話やローマ神話の物語が、ボルゲーゼ・ギャラリー所蔵の絵画や彫刻の主題や登場人物に強い影響を与えていることはよくあります。

特にジャン・ロレンツォ・ベルニーニの彫刻には、ギリシャ神話やローマ神話から抜粋され、大理石という不朽のフォルムに命を吹き込まれた人物が数多く見られる。これらの大理石彫刻の繊細な曲線や複雑なディテールを鑑賞するのに、それほど予備知識は必要ないが、そのインスピレーションとなった美しくもしばしば悲しい物語について詳しく知ることで、その意味をより深く理解することができるだろう。

それを念頭に置いて、ボルゲーゼ美術館のコレクションを訪れる前に知っておくべきギリシャ・ローマの神話をいくつか紹介しよう。

アポロとダフネ

月桂樹の葉がなぜ勝利と勝利を象徴するのか、不思議に思ったことはないだろうか。スポーツや音楽、詩のコンクールの勝者がなぜ月桂樹の葉の花輪で戴冠することが多いのかご存知だろうか?それは、ベルニーニの最も有名な大理石の彫刻に描かれたアポロとダフネの悲しい物語に由来する。

彫刻を見ると、両手を広げて苦悩する女性と、その後ろから手を伸ばす男性がいる。よく見ると、その女性、正確にはダフネという山の精が木に変えられている。何がこのような奇妙な出来事を引き起こしたのだろうか?長い話を短くまとめると、キューピッドの機嫌を損ねない方がいいということだ。

理性、音楽、詩の神であるアポロンは、キューピッドの弓が彼の弓に比べて小さいことをからかった後、それを思い知った。それに対してキューピッドは、マキャベリストの意地悪な女子高生が無害な子犬に見えるような、冷酷で残酷な計画を思いついた。 

まず、キューピッドはアポロを黄金の矢で射た。次に、キューピッドはダフネに鉛の矢を放ち、誰とも恋に落ちることができないようにした。ここから空白を埋めることができるだろう。少年は少女を見る。少年は少女を追いかける。少女は川を司る神である父に、少年の誘いから逃れるために自分を木に変えてくれるよう頼む。典型的なティーンエイジャーのロマンス。

ベルニーニの彫刻が捉えた瞬間である。アポロは、森の中を長い間追いかけた末に、ついにダフネ(彼の愛情の対象)を捕らえたが、時すでに遅し。彼女の月桂樹への変身はすでに始まっていた。彼の手はダフネを包むが、触れるのは木の皮だけ。彼は無駄に泣き叫ぶ:

"乙女の中で最も美しい乙女よ、あなたは私の手から去りました。しかし、少なくともあなたは私の木となる。あなたの葉で、私の勝利者たちはその眉を飾るだろう。我が勝利のすべてにおいて、貴女はその一翼を担うだろう。アポロとその月桂樹は、歌が歌われ、物語が語られるところならどこでも、共に結ばれるであろう」(オヴィッド『メタモルフォーゼ』I、555-559)。

アポロが月桂樹の葉に親しんだのは、ダフネへの片思いの証であり、その結果、月桂樹の葉は運動、学問、文化的達成の象徴となった。今度月桂冠を見かけたら、キューピッドの復讐の矢によって動き出したこの悲しい展開を思い出してほしい。

ボルゲーゼ美術館のコレクションを訪れたら、ベルニーニの「アポロとダフネ」をお見逃しなく。2人の表情やダフネの手足の細部に注目し、運命的な変身をご覧ください。

プロスペリーナの誘拐

プロスペリーナの誘拐」もよく知られたベルニーニの彫刻で、ロマンチックな追跡物語のクライマックスの瞬間をとらえている。しかし、このローマ神話はより暗く不穏なもので、誘拐というよりむしろ強姦と訳されることが多い。

この彫刻では、またしても男性と女性が描かれている。ただし、この場合はどちらも神である。左側は冥界の神プルートで、黄泉の国からまっすぐにやってきた。右側は豊穣の女神プロスペリーナで、ジュピターとセレスの娘である。

ご想像のとおり、冥界の神である冥王星は、それほどいい男ではない。彼がプロスペリーナを追い求めるのは、アポロとダフネの場合のような愛によるものではなく、欲望と欲望という原始的な本能によるものだ。彼の抱擁はメランコリックな憧れではなく、力と攻撃によるものだ。

では、ここで何が起こったのか?この物語は実は単純なものだ。ある晴れた春の日、プロスペリーナはペルグーザ湖(シチリア島のエンナ市郊外に実在する)のほとりで花を摘んでいた。突然、どこからともなく、冥王星が、想像を絶する意地悪で恐ろしいモグラのように地面から飛び出してきて、彼女を拉致し、世界一不運な花嫁にするために冥界に連れて行こうとする。

これは、ベルニーニがわずか23歳で完成させた彫刻の中で不朽のものとなった瞬間である。彼の身になって、この作品で伝えようとしたであろう感情や身体性を想像してみてほしい。 

プロスペリーナは突然の冥王星の出現に衝撃と恐怖を感じており、冥王星の手から逃れようと腕を振り回している。彼女の頬に点在する繊細な涙と、彼女の手がプルートの側頭部を押している様子に注目してほしい。

プロスペリーナを宙に浮かせた冥王星は、厳しい決意と力強さを体現している。プロスペリーナを誘拐するための努力で、彼の筋肉は膨れ上がっている。彼の指が彼女の脇腹と太ももに押しつけられる様子は、彼の握力の強さを示しており、大理石を石ではなくほとんど肉のように見せる見事なディテールである。

彫刻に描かれたこの瞬間の後、大混乱が起きたと言える。セレスは取り乱し、干ばつで不作になると暴れるので、ジュピターが介入して、冥王星がその年の半分だけ娘を預かるという取引をしなければならなくなる。 

このローマ神話によると、これが地球の季節を変える原因となっている。秋と冬は、プロスペリーナが冥王星と地獄にハネムーンに行っている時で、春と夏は、彼女がセレスと故郷に帰っている時なのだ。寒さと戦いながら、ホットココアとモコモコのスリッパで季節の変わり目の憂鬱を食い止めようとするとき、誰のせいにすればいいか、これでわかっただろう。

ボルゲーゼ美術館のコレクションを訪れたら、第4室「皇帝たちの間」にあるベルニーニの《プロスペリーナの誘拐》をお見逃しなく。あれは黄泉の猟犬ケルベロスで、飼い主と同じくらい意地悪なのだ。

最終的な感想

さて、ベルニーニの最も有名で名高い2つの彫刻にまつわる物語を知ったあなたは、ボルゲーゼ美術館のコレクションを訪れていよいよその前に立ったとき、彼の作品をより深く理解することができるだろう。

しかし、他の芸術作品についてはどうでしょう?ボルゲーゼ美術館のコレクションで出会う絵画や彫刻には、それぞれ同じような物語が隠されています。ボルゲーゼ・ギャラリーの所蔵作品についてよく調べるか、ガイド付きツアーを予約して、名画から名画へと歩きながら、そのような物語を語ってくれる専門ガイドと巡るのもいいでしょう。

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